初めての場所に行くときや、人前で話すときに緊張したり、「いやだな〜」と感じることは誰にでもあることです。
不安な気持ちや嫌な気持ちは、誰しも一度は経験したことがあるでしょう。
しかし、そのような気持ちがあまりにも強くなり、「まったく話せなくなってしまう」ほどの悩みを抱える人もいます。
このように、特定の場面で話すことができなくなってしまう状態を 「場面緘黙(ばめんかんもく)」 と言います。
場面緘黙のある人は、「話そう」と頑張っていても声を出すことが難しく、場面によっては身体が固まって動けなくなってしまうこともあります。
これは単なる「引っ込み思案」や「恥ずかしがり屋」といった性格だけでは説明できないものです。
今回は、誤解されがちなこの「場面緘黙」について、少しでも理解を深めていただけたらと思います。
場面緘黙とは
場面緘黙とは、特定の場面で話すことができなくなる状態を指します。
例えば、家庭や仲の良い友達とは普通に会話ができるけれど、学校や外出先では話せなくなってしまう。
話すことだけでなく、身体が緊張して動けなくなる場合もあります。
精神的には「不安障害の一種」とも考えられています。
「Aという場面で話そう」と事前に決意していても、いざその場になると不安が一気に高まり、声が出なくなってしまうのです。
場面緘黙の発症率はおよそ 100人に1人 と言われていますが、実際には見逃されているケースも多く、もっと多い可能性があるとされています。
場面緘黙は気付かれにくい
場面緘黙が周囲に気づかれにくいのには、いくつかの理由があります。
- 発症は未就学期から始まっていることが多いが、周囲が「話せないこと」に気づくのは小学校入学後が多い。
- 入学式などの新しい環境では「みんな緊張するもの」と思われ、対応が後回しになってしまう。
- 家庭ではよく話すため、「学校ではちょっと内気なだけ」と誤解されやすい。
- 医療機関によっては場面緘黙に詳しくない場合もあり、受診しても「恥ずかしがり屋」で済まされてしまうことも。
- 学業に支障がなければ、配慮は不要と判断されてしまうこともある。
引っ込み思案と場面緘黙ってどう違う?
引っ込み思案:内気な性格で、自分から積極的に関わることが苦手。場面を問わず一貫して控えめな傾向が見られる。
場面緘黙:特定の場面(人前など)で不安が強くなり、話せなくなってしまう。逆に安心できる場面では、むしろおしゃべりになることも多い。
場面緘黙の「ループ」とは
場面緘黙の子どもたちは、次のような「ループ」を繰り返していることがあります。
① 集団場面で話しかけられる(不安になる)
→ ② 声を出せない
→ ③ 近くの人が代弁・代行する
→ ④ その場がやり過ごされる(不安場面が一時的に終了)
→ また①に戻る
このループによって、「話せない場面」を繰り返し経験し、不安が強まっていくことがあります。
また、③の「代弁」が続くことで、
- 「誰かが代わりに話してくれるから大丈夫」
- 「代弁してもらって申し訳ない。早く話さなきゃ。でもできない」
といった心理が生まれ、さらに不安が強まるという悪循環になることもあります。
場面緘黙の支援では、まず「話せる場所/話せる人」を特定することから始めることがあります。
その詳細については下記記事でも紹介しているため、よろしければご覧ください。