「しました」が「ちまちた」になる子へ。さ行がた行に置き換わる原因と、家庭・教室でできる発音サポート

「先生、うちの子『しました』が『ちまちた』になっちゃうんです。さ行がうまく言えなくて…」
ことばの発達支援の現場では、保護者の方からこうしたご相談を頻繁にお受けします。
一生懸命にお話しする姿はとても可愛らしいものですが、就学が近づくにつれて「からかわれないか」「本人が気にしないか」と不安を抱く保護者の方も少なくありません。

なぜ「さ行」が「た行」に置き換わってしまうのでしょうか。言語発達や構音(発音)の専門的な視点から、そのメカニズムを紐解き、無理なく楽しく取り組める「舌の脱力」や「ストローを使ったアプローチ」など詳しく解説します。

なぜ「さ行」が「た行」になるの?(構音のメカニズム)

まずは、「さ行(摩擦音)」と「た行・ち・つ(破裂音・破擦音)」の発音の仕組みの違いを知ることが大切です。

「さ・す・せ・そ」や「し」などの音は、舌を上あご(口蓋)に近づけ、そこにごく僅かな細い隙間を作り、息を「スーッ」とこすり合わせるようにして出す「摩擦音(まさつおん)」です。

一方、「し」が「ち」になるケースを考えてみましょう。「ち」は、一度舌を上あごにピッタリとくっつけて息を完全にせき止め、その後に少しだけ隙間を開けて息を出す「破擦音(はさつおん)」という種類の音です。

子どもにとって、口の中で「舌を浮かせたまま狭い隙間をキープし、息を出し続ける」という摩擦音のコントロールは、非常に難しい運動となります。
そのため、うまく隙間を維持できず、舌に力が入って上あごにピタッとくっついてしまい、息がせき止められて「ち」や「た」になってしまいます。

「さ行」の獲得はゆっくり。まずは発達の目安を知る

「ぱ行」や「ま行」など唇を使う音は1〜2歳頃から比較的早く獲得されますが、舌の繊細なコントロールが必要な「さ行」や「ら行」の獲得はゆっくりです。一般的に4歳〜5歳、場合によっては6歳頃までかかることもあります。

そのため、3歳や4歳で「ちまちた」と言っていても、それは「発達の途上(練習中)」であることがほとんどです。
焦って「違うでしょ」言い直しなどをすると、かえって話すことへの苦手意識や過度な緊張を生んでしまうため注意が必要です。

発音練習の前に!重要となる「舌の脱力」

さ行がた行になってしまう子どもは、発音するときに舌やあご、唇に過度な力が入っている(緊張している)ことがよくあります。

舌に力が入ると、どうしても上あごに強く押し付けてしまい、隙間(摩擦)を作ることができません。

そのため、直接的な発音練習に入る前に、まずは口周りや舌の「脱力」を促す遊びを取り入れることが非常に効果的です。

【遊びの中でできる舌と口周りの脱力トレーニング】

リップトリル(唇のブルブル)
唇を閉じて息を吹き出し、「ブルブルブル!」と振動させます。唇だけでなく、顔全体の余計な力が抜ける効果があります。

馬の足音(舌打ち遊び)
舌全体を上あごに吸い付け、「ポンッ」「カッ」と音を鳴らします。
舌をダイナミックに動かすことで、舌の筋肉の柔軟性を高め、緊張をほぐします。

あっかんべー体操
「あー」と口を大きく開け、舌を思い切り下に出して「べー」。
次に舌を鼻の頭に向けるように上に伸ばします。これを繰り返すことで、舌の付け根の緊張を和らげます。

■ほっぺたぷうせん
口に空気をいっぱい溜めてほっぺを膨らませ、両手で「ポンッ」と押して空気を抜きます。口腔内の空間を広げる感覚を養います。

ストローを使ったアプローチと日常生活でできること

舌の緊張がほぐれてきたら、「さ行」特有の「細い息の通り道(正中溝:せいちゅうこう)」を作る練習をします。
ここで活躍するのがストローです。ストローを使うことで、物理的に舌が上あごにくっつくのを防ぎ、正しい息の方向を感覚的に掴みやすくなります。

【ストローを使った呼気と舌の練習ステップ】

  1. 短いストローを用意する
    一般的な太さのストローを子どもに合わせながら調整します。
    (長すぎると息を吹き出す力が必要になってくるため、楽に息を出せるくらいがいいです。)
  2. 歯と舌でストローを軽く挟む
    上下の前歯の真ん中でストローを軽く噛みます。
    この時、ストローの下半分が舌の真ん中(舌の先から少し後ろあたり)に触れるように優しくセットします。
    「ストローを舌のお布団に乗せてね」などと声かけすると伝わりやすいかもしれません。
  3. ストローから息を吹き出す
    その状態のまま、「フーフー」「スーッ」とストローの穴を通して息を前に出します。
    舌が上あごにピッタリくっつこうとしてもストローが邪魔をするため、自然と舌の真ん中に息の通り道(隙間)ができます。
    口の真ん中であるストローからしっかりと息が出ていることを確認しましょう。
  4. 息の音を聞く・感じる
    手の甲を口の前に当てて、ストローから出てくる細くて冷たい息の風を感じさせます。
    「スーッていい音がするね」と、摩擦する音を耳と肌でフィードバックできます。
  5. ストローを外して挑戦
    ストローで「スーッ」と息を出す感覚(舌のポジション)が掴めてきたら、ストローをそっと引き抜き、同じ口の形と舌の力の抜け具合で「スー」と言ってみましょう。

※この練習は、子どもが「遊び」として楽しめる範囲で行ってください。疲れたり嫌がったりした場合はすぐに切り上げましょう。

日常生活でできるサポート(音韻認識と環境調整)

身体的なアプローチに加えて、以下のような関わりも大切です。

耳を育てる(音韻認識へのアプローチ)
大人が言う「しました」と「ちまちた」の違いを、子ども自身が耳で聞いて区別できているか(音韻認識)が重要です。
「『しろ』と『ちろ』、どっちが正しいお名前かな?」といったクイズ遊びを通して、正しい音のイメージを頭の中に作っていきます。

正しい音をさりげなく聞かせる(リキャスティング)
子どもが「せんせい、落とちまちた」と言った時、「『落としました』でしょ?」と訂正するのではなく、「本当だ、落としましたね」と、正しい発音を自然な会話の中で聞かせてあげます。
これを繰り返すことで、子どもは正しい音韻モデルをインプットしていきます。

まとめ

「さ行」の構音の誤りは、成長とともに舌やあごの運動機能が発達し、音韻認識が深まるにつれて、多くの場合自然に改善していきます。

私たち支援者や大人がすべきことは、完璧な発音を急がせてプレッシャーを与えることではなく、「自分の思いが相手に伝わる喜び」をたくさん経験させることです。

「ちまちた」という今の可愛らしい響きも大切に受け止めながら、舌の脱力遊びやストローを使ったちょっとしたゲームを取り入れ、子どものペースに合わせた豊かなことばの育ちをサポートしていくのはどうでしょうか。

¥3,080 (2026/03/15 16:58時点 | Amazon調べ)

-子育て情報, 支援者向け
-