子どもが言葉を覚えはじめる頃、最初に話すのは「ママ」「ブーブー」「ワンワン」といった、目に見えるものの名前が多いです。
これは名詞と呼ばれる言葉で、視覚的にわかりやすく、言語獲得の初期に多く学びます。
しかし、語彙力を豊かに伸ばしていくためには、名詞だけでは足りず、子どもの言語発達において重要な役割を果たすのが動詞となっています。
「たべる」「ねる」「いく」「あそぶ」など、動きを表すこの言葉が使えるようになることで、子どもの語彙はぐんと広がっていきます。
名詞だけでは足りない?語彙の発達に必要な言葉とは
名詞は子どもにとって最初に習得しやすい語彙です。
視界に入ったものを指差して「ワンワン!」「ママ!」と発話することは、言葉のスタートラインとしてとても自然なことです。
しかし、名詞だけでは「物の名前」を伝えることはできても、「何が起こったのか」「どう思ったのか」など、出来事や気持ちを伝えるには限界があります。
そこで必要になるのが動詞です。
動詞が入ると文になる!「誰が・何を・どうした」を伝える力
動詞が使えるようになると、子どもの発語は単語から“意味のある文へと変化していきます。
たとえば
「ママ、くる」「ブーブー、のる」
のように、動詞が加わるだけで、行動や出来事をより具体的に伝えることができるようになります。
これは、子どもが2歳前後から見られる大きな発達のひとつです。
この時期の子どもたちは、「誰が」「何を」「どうしたのか」という簡単な出来事を言葉にしようとし始めます。
動詞は、その文づくりの中心にある、大切なピース的な存在になっていきます。
動詞が語彙を広げる?「たべる」からつながる言葉の世界
動詞は、単体で機能するだけでなく、周囲の言葉とのつながりを生み出す効果もあります。
たとえば
「たべる」
という動詞を覚えると、そこから「ごはん」「スプーン」「おかわり」「おいしい」など、食事に関連する語彙が広がっていきます。
つまり、動詞が名詞や形容詞、助詞などの語と結びつきながら、語彙のネットワークをつくっていきます。
語彙が豊かになるということは、子どもが自分の経験をより細かく言葉で伝えられるようになるということでもあり、そのスタート地点として、動詞の習得はとても重要です。
声かけで育てる動詞習得
動詞は目に見えにくい概念であるため、子どもにとっては理解しにくい言葉でもあります。
だからこそ、大人の「声かけ」が大きな鍵になります。
たとえば
■ 一緒におにぎりを食べながら「おいしいね、たべようね」と話しかける
■ ボールを転がしたときに「ころがったね!」「つかんだね!」と声をかける
このように、子どもが今していることを、そのまま言葉にする声かけは、動詞の意味と行動が結びつくきっかけになります。
意味を深めるには「具体的な動詞のバリエーション」
動詞の語彙を広げていく上で、もうひとつ大切なのが大人の使う言葉のバリエーションです。
たとえば、「やる」「する」だけにとどまらず、「つかむ」「ならべる」「おとす」「まぜる」など、具体的な動詞を使って伝えることで、子どもの理解力はより深まります。
また、子どもが使い始めた言葉に対して、大人が少し言葉を足して返すことで、自然に語彙の幅も広がっていきます。
まとめ
動詞は、単なる行動を示すだけの言葉ではなく、子どもが自分の体験を整理し、気持ちを他者に伝えるための土台となる、大切な言葉です。
「はしった!」「やりたい!」「おちた!」という子どもの発言を、そのまま受けとめること。
そして、「〇〇くんが外で走ったんだね」「それ、やりたかったんだね」と言葉を広げて返すことで、子どもの表現力はどんどん育まれていきます。
このような日常の中でできる声かけの工夫が、子どもの語彙力の土台をつくる第一歩になります。