マンド・タクト・エコーイック~言語行動を再考する

私たちの日常使われていることばはコミュニケーションとして成立した結果、様々なことばを習得していきます。

「みかん〜」ということばを発したら目の前に果物のみかんが出てくるという場面…
日常生活ではこれらが当たり前のよう繰り返されます。

物を欲するとき。人に物や出来事を示すとき。相手のことばに返答をする。このようにことばを使う場面状況によってことばの機能そのものが異なってきます。

言葉は使う場面によって役割が変わります!

心理学者のB.Fスキナーという先生は『言語行動』という著書の中で、ことばと行動の関係性について述べています。

言語行動というワードは応用行動分析学という学問の中で語られることが増えてきました。この学問は行動そのものに対してどのような結果が出現するか分析していますが、ことばも行動の中に含まれます。

学問上だけで済まされやすいのですが、発達支援の中でも言語行動ということばの機能的な部分が度々使われるのではないかと考え今回はこのようなテーマを選びました。

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言語行動の7つの機能を知りたい人

言語行動の7つの機能

冒頭でことばの機能には様々なものがあると触れましたが例えばAさんの言った「みかん」とBさんの言う「みかん」。

二人とも同じことばですが、Aさんは果物のみかんが欲しかったため「みかん」と言い、Bさんは目の前に果物のそれがあったため「みかん」と呟いたとします。

Aさん
Aさん

みかん!(欲しいな~)

みかん!(あっ みかんがあった)

Bさん
Bさん

Aさん発したことばは要求を示す機能であり、Bさんはことばを報告するという機能が働いていました。

このように同じことばでも目的によってことばの機能が異なります

スキナーはこのような言語行動の機能を7種類に分類しました。

画像

図に示した通り

マンド
タクト
エコーイック
イントラバーバル
テキストコーピング
テクスチャル
トランスクリプション
の7種類の機能です。

難しい用語で分類されていますが、これらの機能は日常生活で度々使われるものとなっています。

マンド

「欲しい!」「~したい」という要求することばがこれに該当します。

生まれたばかりの赤ちゃんは泣くことによってそれを要求します。少しずつ大きくなり指差しができたり、喃語等を通じて音声言語であることばの役割を学習します。

私は要求行動の獲得することがコミュニケーション能力を劇的に伸びると考えており、ことばのレッスンでは要求行動(マンド)から始めていくことが多いです。

特にことばを話し始める前の子どもについてはマンドの練習から始めています。

音声言語だけがことばではありません。ことばを話し出す前から目線や指さし等を通じてものや人を欲する気持ちを伝えます。

そのため、目線や指さし、ジェスチャーを通じて要求行動の練習を進めていくことがあります。

タクト

タクトは報告をするということ。

画像

絵カードを使ってことばのレッスンをすることが多いかと思います。実施する方法として絵カードを見てもらって、その名前を言ってもらうというもの。

いわゆる呼称と呼ばれるものですが、子ども自身から見たものを報告するといったものがこれに当てはまります。

報告以外に「みかん」といって物を要求する場合はマンドに当てはまりますし、やりとりの一貫として意味されたものであれば下記のイントラバーバルに該当するのではないでしょうか。

エコーイック

同じ音声を発することをエコーイックと言います。


復唱音声模倣がこれに当てはまります。

音声模倣は同じ音またはことば(音)を発することを目的としていますが、模倣した音声だけではコミュニケーションとしては成立しにくいのではないでしょうか。

音声模倣が出来たら、何かしらの意味付けをしていく必要があります。

この意味付けこそが要求言語としてのマンドなのか、報告としてのタクトなのか。必ず音声に何らかの役割を持たせていきましょう。

ことばのレッスンではマンドの練習から始めていくことが多いとお伝えしましたが、これと並行しながらエコーイックである音声模倣を行うことによって音声言語を通じたコミュニケーションの獲得に繋がるのではないでしょうか。

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イントラバーバル

やりとりをすること。やりとりというと会話を想像するかもしれませんが、他にも関連したことばを言うこともこれに当てはまります。

私がよく使う方法として、話の途中で止めるということ。

一見?マークが思い浮かぶと思うのですが、例えば「いち・に・さん・し…」のように数字を数えた時に「し(4)」で止めることによって、続きの数を子ども「ご(5)」のように話してもらうということ。

数の他に歌のように「あたま・かた・ひざ…」で止めると「ぽんっ」と子どもから歌に合わせて発してくれるという経験がたくさんありました。

「あたま・かた・ひざ…」

「…ぽん!」

これらも関連したことばを発するという意味でイントラバーバルに当てはまります。

会話として「この前はみかんをありがとう」「どういたしまして/美味しかった?」「甘くととても美味しかったよ」のようなやりとりもこれに該当します。

※タクトは人に意図を伝えるというより、発話者だけで完結します。そこから人に伝える楽しさなどコミュニケーションを知っていくことによってイントラバーバルへと繋がっていくのではないでしょうか。

テキストコーピング

書いてある文字を書き写すということ。

みかん”というひらがなをみて“みかん”と別紙に書く等がこれです。

文字を学習し始めは、文字を書き写すという学習に取り組んでいるのではないでしょうか。

本の文字や黒板の文字などを学習目的で使っていくだけでなく、紙に記録をして残すという意味でも度々使うのではないでしょうか。

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テクスチャル

書いてある文字を音読するということ。

“みかん”というひらがなを見て「みかん」と声に出すことがこれです。度々言われる「声に出して読むと記憶が定着する」ということば。

テクスチャルに限った話ではないですが、テキストコーピングでも、複数の情報(見た情報+手を動かす、見た情報+音声化)にすることによって脳内が活性化されます

もちろん、個々によって不得手があったり、情報が多すぎると脳内に負荷が掛かりすぎてしまう逆効果になってしまうこともあります。

大人になってくると自分自身の学習スタイルを把握していることが多いため、それに適した方法で進めていきたいですね。

トランスクリプション

聞いたことばを書き記すということ。

日々の臨床で会話分析から手立てを考える時はトランスクリプションを使用することが多いです。

大人と子どもの会話を全て書き記してことばの機能や文法能力(平均発話長など)を評価するときにも役立てることができます。

ことばの機能に注目する

上で述べた7つの機能は、何を目的としてことばを発するかによって捉え方が異なります。

例えば「みかん」ということば。果物のみかんを欲した場合マンドになります。みかんを見て「みかん」と口に出すだけの場合はタクト。このように同じことばでも発した音声の目的によって機能が異なります。

ことばの学習例

音声言語でエコーイックから始めそれらをタクトで確認。
そしてその音声言語でマンドやイントラバーバルに繋げていくという流れでことばの学習を進めることもあります。

ここでのことばの学習例は
音声言語だけでなく、ジェスチャーを交えたコミュニケーションの練習としても同様です。

しかし、これらはいずれも支援者によって異なるかもしれません。目の前の人に合わせた使い方をしましょう。

ことばのレッスンは目標を明確に

言語行動には上記のような機能がありますが、実際のことばを促す学習は表出面(話す)だけでなく、理解面やコミュニケーション面などバランス良く進めていきます

ことばは一つ学習したら終わりでなく、そのことばを次にどのように活かしていくのかを連鎖的に考える必要があります。

これをことばの数だけ学習していくと考えると、ことばの学習が如何に難しいのか感じられるかと思います。

難しいレッスンだからこそ、なぜその練習をしているのか。

例えば音声模倣(エコーイック)としたら、なぜその音の真似をするのか。

音声模倣ができたらその次はそれをどう活かしていく?その音声を使ってマンド?

それとも理解力確認のためにタクト?様々な選択肢があると思いますが、どの機能に焦点を当てるのか。その次はどのような機能または語彙にスポットを当て学習するか。

これらを普段から少しでも意識付けしていくことによって、一人ひとりの子どもたちと向き合えるのではないでしょうか。

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上記本は言語行動に特化した本です。言語行動について複数の人物が登場して話が進められています。

下記は言語行動だけでなく、行動分析学について総合的に書かれている本です。

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