保育と療育は、共に子どもたちの成長や発達支援という点に関して同じですが、「保育でどのように絵カードを使ったらいいですか?」と聞かれることもあります。療育では絵カードを様々な方法で用いています。保育と療育での絵カードの使い方について分ける必要はないかもしれませんが、今回はそれぞれの場所でどのように絵カードを活かせるか考えてみます。
保育と療育の違い
保育と療育の主な違いは、対象となる子どもたちの特性と、提供される支援の内容や方法です。保育は、主に全ての子どもを対象にした日常生活の支援であり、集団生活の中で社会性や食事など基本的な生活習慣を身につけることを目的としています。療育は、発達がゆっくりなお子さんや気になるお子さんが通う場所であり、個別のニーズに応じた専門的な支援を提供することを目的としています。どちらも園や施設の特色によって受け入れる子どもは変わります。
さらに、保育士と療育の専門家(療法士や心理士など)の役割や資格も異なります。保育士は保育の専門知識と技術を持ち、集団生活の中での子どもの発達を支援します。一方、療育の専門家は、保育士や児童指導員、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、公認心理師などそれぞれの分野で高度な専門知識と技術を持ち、個別の子どもたちに対して特化した支援を行います。
以上のように、保育と療育は子どもたちの成長と発達を支援という共通の目的を持ちながらも、アプローチや対象、提供される支援の内容について各所の方針によって違うのではないでしょうか。
保育と療育での絵カードの使い方
絵カードは視覚的な情報を通じて子どもたちの理解を助けるツールとして、保育や療育の場で広く使用されています。保育と療育のそれぞれの立場から、絵カードの使い方について詳しく説明します。
保育における絵カードの使い方
保育の場においては以下のような使い方がおすすめです。
・語彙の獲得
絵カードを使って動物や食べ物、生活道具の名前を学ぶことができます。
・生活習慣の指導
朝の身支度や手洗い、食事などの日常生活の習慣を学習するため絵カードを用いることも可能です。身支度や手洗いの手順などを視覚的に示すことで子どもたちは自主的に行動することができます。
・感情の理解
子どもたちと集団生活を送る上で楽しい気持も嫌な気持ちもたくさんあります。お友達と一緒にダンスをしたり。制作物などにおいて感情(表情)を似顔絵で表現することもあるかもしれません。そのような集団生活の中で絵カードを使って様々な表情を知ることも交友関係を育む上で大切なことです。
・ナラティブ
ナラティブは語りとも言われ、自分が経験したことや見たことなどを話すことを言います。絵カードでもナラティブの力を学習することができます。例えば、公園などのイラストを見てもらい、「どのような遊具で遊んだことがあるか」「どこの公園へ行ったことがあるか」などの絵カードを手掛かりにすることで表現するきっかけとなります。
療育における絵カードの使い方
療育の場においては下記のような使い方がおすすめです。
・コミュニケーション支援
ことばを上手に話すことが苦手な子どもに対して絵カードを使って自分のやりたいことを表現することもできます。例えばお腹が空いたときに”ごはん”の絵カードを相手に渡してご飯を食べたい旨を伝えるなど。
・構造化
活動内容をカードに示すことやスケジュールとして並べることで「今は遊ぶ時間」「次はごはんの時間」など予定がわかることで見通しよく不安が軽減されます。
・SST
社会ルールを学ぶために挨拶カードや片付けカードなどでやることを示すことや集団生活場面の絵カードを見せてどのような状況か。今後どのようなことが起きるのかなどについて考えてソーシャルスキルを学習することができます。
・感情表現
感情を理解し、伝えるスキルは、子どもたちが良好な人間関係を築くために不可欠なものです。絵カードを使うことで、感情の認識や表現、心情語彙の獲得、共感のスキルなどを学べます。
いずれも使い方を分けて考える必要はない
絵カードの使い方は保育では~、療育では~と分けずに子どもたちが安心して生活できるより成長できるかを考えて使っていきましょう。
上記の保育での使い方を療育で実施することも多いです(逆に然り)。そのため様々な絵カードの使い方を子どもたちに会わせながら使っていきましょう。