発達支援の現場では「早期療育」「早期介入」の重要性が度々指摘されています。
自治体による親子支援サービスや、医療機関でのPT(理学療法士)・OT(作業療法士)・ST(言語聴覚士)などの専門職による支援もありますが、支援を受けたくても場所やタイミングによっては医療機関での対応が難しい場合もあります。
近年では民間事業者による障害児通所支援事業(いわゆる「療育」)が全国的に増加しています。
事業所によって支援内容は大きく異なり、集団支援から個別支援までさまざまな形態があります。
運動療法や音楽療法、ABA(応用行動分析)を取り入れ居てる事業所もあるなど、実に多様です。
多くの事業所では、ひとつのアプローチに限定するのでなく、複数の手法を組み合わせた支援が行われています。
今回は数あるアプローチのひとつ「JASPERプログラム」について紹介します。
このアプローチは日本ではあまり知られていませんが、ABAが主流のアメリカで広く活用されており、非常に魅力的な支援方法です。
本記事は以下の書籍を参考にしています。
JASPER実践マニュアル: 自閉スペクトラム症児のための早期支援モデル
JASPERとは?
JASPER(Joint Attention, Symbolic Play,Engagement,and Regulation)は
Joint Attention:共同注意
Symbolic Play:象徴機能遊び
Engagement:関わり
and Regulation:感情調整
という4つの領域に焦点を当てたプログラムです。
従来の言語訓練が個室で行われることが多いの対し、JASPERでは「子どもと一緒に遊ぶ」という自然な流れの中で支援を進めるのが特徴です。子どもが自発的に関われるよう、遊びやすい環境を設定し、共同注意や要求行動を促していきます。
共同注意
共同注意は遊んでいる大人に目を向けるだけでなく、以下のような行動を含みます。
・大人の指さしを見る
・大人と対象物を交互に見る
・興味のあるものを指さす
・興味のあるものを見せる
・興味のあるものを渡す
・視線を合わせる
・言葉を使って大人に話しかける
こうしたやりとりの中で、子どもは他者との関わり方を学んでいきます。
象徴機能遊び
JASPERプログラムでは遊びを4段階に分類しています。
①単純遊び
ひとつのおもちゃを単体で動かす、開け閉めするなど単純な遊び
②組み合わせ遊び
・ブロックを積む、型はめをする、物を仕分けるなど二つのおもちゃを組み合わせて遊び
③前象徴機能遊び
電話を耳に当てる、ごはんを食べるふりをするなど、実物の用途に即した模倣遊び
④象徴機能遊び
積み木をケーキに見立てて人形に食べさせるなど、想像の力を用いた遊び
この段階的な発達を踏まえ、大人が適切に働きかけることで遊びの幅を広げていくことが重要です。
関わり
子どもの関わりの状態は以下のように分類されます
・何もしていな
・見ているだけ
・人とは関わるが物とは関わらない
・おもちゃだけで遊び
・人とおもちゃの両方と関わる
子どもの現在の関わりのレベルを把握し、次の段階へ移れるよう支援していきます。
感情調整
子どもが遊びの中に急に不安定になることは少なく、事前に次のような兆候が表れることがあります。
〇状況と気分が一致していない
〇状況にそぐわない言動や行動が増える
〇通常よりも同じ事を繰り返す事が増える
こうしたサインを見逃さず、以下のような方法で感情調整を支援します。
①環境の評価
刺激の多さを見直す
②選択肢を与える
おもちゃや遊びを選ばせ気持ちを切り替える
③遊びのモデルを示す
子どもが真似しやすいように大人が遊び方を見せる
④対人的な関わりでリセット
手遊びやごっこ遊びで心を落ち着かせる
⑤子ども主体の遊びへ切り替える
大人主導を避けて、子どものペースに合わせる
※もし遊びに戻れない場合は、ABAの機能分析を使って「注目」「要求」「逃避」「自己刺激」など、行動の背景にある要因を探りましょう。
アセスメント(SPACE)
JASPERを行う際は、事前にアセスメントとしてSPACE(Short Play and Communication Evaluation)を用います。
・評価時間は15分
・関わり、遊び、共同注意、感情y統制の領域を観察
・子どもの自主的な行動を重視した評価方法
まとめ
JASPERは遊びの中で子どもの自発性を引き出し、発達を支援するアプローチです。
遊びのレパートリーを広げ、子どもの関わりや感情調整能力の発達を促します。
JASPERを取り入れることで、発達支援の視野が広がり、個々に合わせたアプローチができるようになります。私自身もJASPERの考え方や技術をもっと深く学び、自分の支援に活かしていきたいと考えています。
ぜひ皆さんもJASPERプログラムを支援のひとつのヒントとして取り入れてみてはいかがでしょうか。

