犬を見て「これなあに?」「ワンワン!」
花を見て「じゃあ、これは?」「ワンワン!」
絵本の中の動物も、テレビに出てくるキャラクターも、遠くの自動車も、時には通りすがりの人にさえも…。何でも「ワンワン」と言ってしまう時期、子育てをしていれば一度は経験があるのではないでしょうか。
一見すると「えっ、それもワンワン?」と戸惑ってしまうような言葉の使い方も、実は子どもにとって大事な“言葉の第一歩”です。
今回は、そんな「なんでもワンワン」期をどのように捉え、どう関わればよいのかをお伝えします。
「なんでもワンワン」はどうして起こるの?過大汎用とは?

言葉を話し始めたばかりの子どもが最初に覚える単語には共通点があります。
それは「身近なもの」「興味があるもの」「繰り返し耳にするもの」。その中で特に多いのが「ワンワン(犬)」です。
犬は絵本やテレビに頻繁に登場し、鳴き声も真似しやすいことから、子どもが覚えやすい言葉のひとつです。
そして、子どもはまだ名前を知らないものを、知っている言葉で表現しようとします。
その結果、猫も牛も花も、ぬいぐるみも、すべて「ワンワン」になる。これを「過大汎用」と呼びます。
大人にとっては「それもワンワンなの?」と不思議に思えることも、子どもにとっては「伝えたい」「表現したい」気持ちの表れです。
関わり方のポイントは3つ
このような時期の子どもに、どのように言葉を返していけばよいのでしょうか。
大切なのは、言葉の間違いを直すのではなく、育てていく意識が必要です。
正しい言葉を添えて返す
たとえば、猫を見て「ワンワン!」と言ったとき、「ちがうよ、猫だよ」と否定するのではなく、「これは猫だね。にゃーにゃーって鳴くよ」とやさしく言い換えて伝えます。
「伝えたい気持ち」をしっかり受け止める
子どもは、自分なりに何かを伝えたくて、知っている言葉を精一杯使っています。
「そうだね、動いてるね。何かな?」などと返してあげることで、気持ちに共感しながらやりとりを広げていけます。
興味のある分野から語彙を広げていく
たとえば、動物に関心がある子なら、動物がたくさん登場する絵本や図鑑を一緒に読むことで、語彙を豊かにしていけます。
「にゃーにゃー(猫)」「もーもー(牛)」などのオノマトペを用いることで、音や動きと結びつけて学ぶことができ記憶にも残りやすいです。
子どもの言葉の発達は段階をふんで育つ
子どもの言葉は、一夜にして育つわけではありません。日々のやりとりの中で、少しずつ段階を経ながらで発達していきます。
■音や声に反応する(0歳ごろ)
まだ意味はわからなくても、大人の話しかけや歌に耳を傾け、反応し始めます。
■ 初めての単語が出てくる(1歳前後)
「まんま」「ワンワン」など、好きなものや日常的によく聞く言葉を話すようになります。
■名前のあるものが広がる(1歳半ごろ)
「これは◯◯」「あれも◯◯」と、自分の知っている言葉のレパートリーが広がっていきます。
■ 言葉の使い分けができるようになる(2歳〜)
「これはワンワン」「これはにゃーにゃー」と区別がつきはじめ、2語文も話し出す時期です。
「なんでもワンワン」という言い間違いは、実はこの語彙の広がりを見せる大切なサインでもあります。
「ワンワン」と言えることは、すでに立派な発語
最初に覚えた言葉を軸に、子どもは世界を表現しようとしています。
間違いを正すのではなく、子どもが発した言葉をきっかけに、大人も一緒にことばの世界を楽しんでみましょう。
まとめ
子どもが何でも「ワンワン」と言ってしまうのは、ことばのはじまりのとても大切な時期です。
それは「まちがい」ではなく、「伝えたい」「知りたい」という気持ちのあらわれです。
子どものことばを大人が正すのではなく、その表現に寄り添いながら、自然な形で言葉の幅を広げていくことが大切です。
日々のやりとりの中で、子どもが話したい気持ちを応援してあげましょう。
その小さな「ワンワン」から、言葉の世界はどんどん広がっていきます。