「今日は何したの?」「これは何色?」「どっちがいい?」
私たちは、子どもにたくさん話しかけたいと思うあまり、つい質問ばかりになりがちです。
もちろん、「たくさん話してほしい」「考える力を育てたい」という親心からの行動です。
ですが実は、このような質問攻めは、子どもの話しにくさを生みやすいこともあるのです。
幼児期の子どもにとって、「考える」「言葉を選ぶ」「話す」という流れは、大人が思う以上に難しく、負担が大きい作業です。
だからこそ、幼児期には共感的な声かけがとても大切になります。
質問ではなく「状況を言葉にする」声かけを
子どもへの声かけで意識したいのは、質問ではなく、状況をそのまま伝えることです。
たとえば、
積み木で遊んでいる場面では…
「高く積み上げてるね!」「青い積み木を選んだね!」
お絵かき中なら
「ぐるぐるいっぱい描いてるね」「赤い色たくさん使ったね」
このように、子どもの行動を言葉にするだけで、子どもは「見てもらえている」「わかってもらえている」と感じ、安心します。
さらに、大人が自然な日本語で状況を伝えることによって、子どもは正しい言葉の使い方を耳から学び、吸収していきます。

気持ちを代弁する「共感の声かけ」も効果的
もうひとつ大切なのが、子どもの気持ちに寄り添う声かけです。
たとえば、
「おいしそうだね」「楽しそうだね」「できてうれしいね!」
といったように、子どもの感情を言葉にして伝えること。
これによって、子どもは自分の気持ちと「言葉」を結びつける経験を積み重ねていきます。
自分の気持ちに「名前」をつけられるようになることが、やがて自分の思いを言葉で表現する力につながっていきます。
日常生活での実践例|「質問しない声かけ」に変えてみよう
具体的に、どんなシーンでどのように声かけを変えられるでしょうか?
以下、日常の一コマでの実践例です。
お絵かきのとき
×「なに描いてるの?」(→答えにくい)
〇「ぐるぐるたくさん描いてるね!」「青色たくさん使ったね!」
おやつを選ぶとき
×「どっちがいい?」(→即答できず困る)
〇「こっちは丸いクッキー、こっちは細長いクッキーだね」
外遊びのあと
×「どこで遊んだの?誰と?」(→記憶を引き出す負担大)
〇「たくさん走ってたね!すごく楽しそうだったよ」
このように、「問いかける」代わりに「伝える」「感じる」声かけに変えるだけで、子どもは安心して言葉と心を育んでいきます。
質問は本当にNGなの?
もちろん、質問すべてが悪いわけではありません。
子どもが話したいと感じているときや、簡単に答えられる質問は、会話を広げる大きなチャンスになります。
大切なのは、「子どもが答えたいと思っているか」
そして、「安心してやりとりできる雰囲気か」 です。
まずは共感的な声かけをベースにして、自然なやりとりを大切にしていきましょう。
「話させる」より「寄り添う」から始めよう
幼児期の子どもの言葉は、問いかけられるよりも「わかってもらえる」「感じてもらえる」関わりの中で豊かに育っていきます。
子どもは、まずは大人の言葉を聞き、真似しながら、少しずつ自分の言葉を獲得していく存在です。
焦らず、「話させる」ことにこだわらず、
「話しかける」「寄り添う」 そんな一歩から始めてみませんか?
日々の小さな積み重ねが、未来の「伝える力」につながっていきます。