ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは?〜SSTのやり方や教え方について

「学校で友達とうまく関われない」「集団行動でトラブルが多い」とお子さんのコミュニケーション面で悩んでいませんか?

そんな子どもたちの「生きづらさ」や「困り感」を減らし、社会性を育むアプローチとして注目されているのがSST(ソーシャルスキルトレーニング:社会技能訓練)です。

SSTは、幼児期から小学生、さらには成人まで幅広い年代で活用されており、特に発達障害(ASDやADHDなど)のあるお子さんの支援において高い効果を発揮します。

本記事では、言語聴覚士をはじめとする専門家が実践しているSSTの具体的な進め方(5つのステップ)や、プリント・ロールプレイを用いた教え方のコツ、実践時の注意点をわかりやすく解説します。

SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは?意味と重要性

SSTは「Social Skills Training」の頭文字を取った言葉で、日本語では「生活技能訓練」や「社会技能訓練」と訳されます。

人が社会や集団の中で、他者と円滑に関わりながら生きていくために必要なスキル(=ソーシャルスキル)を、対人関係の練習や実践を通して身につける支援方法です。

ソーシャルスキルの具体例

基本的生活マナー:挨拶をする、順番を守る、身だしなみを整える

コミュニケーション:話を聴く、自分の気持ちを伝える、誘う・断る

感情コントロール:怒りを静める、我慢する、不安に対処する

問題解決能力:トラブルが起きたときに話し合って解決する

SSTが必要とされる子どもの「困り感」の例

学校生活や集団の場で、以下のような様子が見られるお子さんは、ソーシャルスキルに課題を抱えている可能性があります。

■自分の話ばかり一方的にしてしまう
■思い通りにならないと、手が出てしまったり大声を上げたりする
■相手の気持ちや、その場の空気を読むのが苦手
■集団の中で常に話し続けてしまい、授業に集中できない
■友達の輪にどうやって入ればいいかわからない

これらは「育て方」や「本人の性格」のせいではなく、「スキルの獲得方法や使い方がわからないだけ」というケースがほとんどです。

SSTを通して適切な振る舞いを「学習」することで、本人も周囲も笑顔で過ごせる場面を増やしていくことができます。

SSTの基本的な進め方|効果を高める5つのステップ

SSTは導入→モデリング→リハーサル→フィードバック→般化という流れで進めていきます。

導入(目的の共有)

まずは「なぜこの練習をするのか」という理由や目標を明確に伝えます。

目標があいまいなまま進めると、子どもの学習意欲(モチベーション)が低下してしまいます。

「今日は、おもちゃを貸してと言われたときに、なんて答えたらお互い気持ちいいかを考えよう」など、子どもが納得できる言葉で伝えます。

モデリング(お手本を見る)

指導者(大人)が、実際の場面を想定した「良いお手本(または悪いお手本との比較)」を実演して見せます。

言葉だけで説明するよりも、視覚的に「こういう時は、こう動けばいいんだ」と具体的に見せることで、子どもは格段にイメージしやすくなります。

リハーサル(実際に練習する)

モデリングで見た動きを、子ども自身が実際にやってみます。

指導者を相手にしたり、グループの仲間とロールプレイを行ったりして、声の大きさや表情、行動を体感的に練習します。

フィードバック(評価と修正)

リハーサルした内容について、「よかったところ」を具体的に褒めます(肯定的フィードバック)。

もし修正が必要な点があれば、頭ごなしに否定するのではなく「次はもう少し優しい声で言ってみると、もっと良くなるよ」と、具体的な改善点を伝えて一緒に修正します。

般化(実生活での実践)

SSTの最終ゴールがこの「般化」です。

練習した場面(教室や相談室)だけでなく、実際の現場(学校の休み時間、自宅、公園など)でも同じように適切な行動ができるように促します。

どのように進める?SSTの代表的な2つのアプローチ

①プリント(ワークシート)を用いたSST

イラストや事例を見て、「こんなとき、どうする?」を文字や選択肢で考える方法です。客観的に状況を整理するのが得意な子や、まずは頭で理解したい子に向いています。

コトノハ教室で作成しているプリントもこのような内容が多いです。(SSTプリントはこちら

例えば下記のような問題があります。

SSTプリントの問題例

シチュエーション:イラスト(2人の子どもがおもちゃを取り合っている場面)

Q1.今、どのようなことが起きていますか?
→男の子と女の子がおもちゃを取り合ってケンカしている

Q2.どうしたらいいでしょうか?
→「貸して」と言う、順番に遊ぶ、大人に相談する

Q3.次からはどうしたらいい?
→最初に使う順番やルールを決めておく

このような客観的な振り返りを通して、トラブルを回避するための選択肢を脳内にストックしていきます。

②ロールプレイを用いたSST

実際の場面を想定して、指導者や子ども同士で劇のように演じる方法です。プリントで理解した知識を、「身体を動かして実践する」ステップとして非常に有効です。

例えば下記のようなシチュエーションで考えてみます。

ロールプレイの問題例

テーマ「おもちゃの貸し借り」
パターンA:指導者2人が「おもちゃを取り合っている悪い例」と「順番に使う良い例」を演じて見せ、子どもに感想を聞く。

パターンB:指導者と子どもの2人で、実際におもちゃの貸し借り場面をリアルに演じて練習する。

パターンC:お友達同士で役を交代しながら演じ、「貸してもらえた時の気持ち」「断られた時の気持ち」を体感する。

ビデオで自分たちの様子を撮影し、後から一緒に見返して振り返る方法も客観的な気づきに繋がります。

ここが重要!SSTを行う上での注意点と成功のコツ

SSTに取り組む上で、多くの支援者や保護者が直面する共通の壁があります。

それは、「プリント学習やロールプレイの場では完璧にできるのに、いざ実生活のトラブル場面になると全くできない」という現象です。

SSTの時間は、静かで落ち着いた環境であり、指導者という「正解を導いてくれる大人」がいる特別な空間です。

しかし、実際の学校や社会は、ガヤガヤとした雑音があり、予測不能な動きをする友達がたくさんいます。

この環境のギャップがあるため、練習通りにいかないのは当然です。

■効果を最大限に高めるための「振り返り」の仕組み
この壁を乗り越え、効果を本物にするためには、「実生活との照らし合わせ(振り返り)」を毎回のルーティンに組み込むことが不可欠です。

振り返りのポイント

実生活の確認:「前回の練習の後、学校でおもちゃの貸し借りあった?」

実践の振り返り:「その時、練習した通りに言えたかな?」

原因の分析と再学習
できた場合:全力で褒めて定着させます。
できなかった場合:「どうして難しかったかな?」「周りがうるさかったからかな?」と理由を一緒に考え、その状況に合わせた新しい対策を次回のSSTに活かします。

「プリントをやらせて終わり」「ロールプレイをさせて満足」ではなく、実生活での行動をキャッチアップし、伴走しながら振り返ることこそが、SSTの効果を最大限に発揮させる唯一のコツです。

まとめ

SST(ソーシャルスキルトレーニング)は、子どもが社会の中で自分らしく、生きやすくするための強力なツールです。

大切なのは、一度に高いハードルを課すのではなく、「導入・モデリング・リハーサル・フィードバック・般化」のスモールステップを丁寧に踏むこと。そして、実際の生活場面と結びつけた丁寧な振り返りを行うことです。

コトノハ教室では、自宅や放課後等デイサービス、学校の通級指導教室などで今すぐ使える「SST無料プリント」を多数ご用意しています。お子さんの「できた!」という自信を育むために、ぜひダウンロードしてご活用ください。

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