児童発達支援・放課後等デイサービスで働く言語聴覚士の悩みごと〜評価や支援方法について〜

小児言語聴覚士として児童発達支援や個人での活動にて子どもたちと関わってきました。小児領域での言語聴覚士のニーズは高いが、就職先が少なく「狭き門」と言われることも珍しくありません。

そのような小児療育ですが勤務先の候補の一つに児童発達支援事業所放課後等デイサービス(児童デイと呼ばれることも)という場所があります。

いわゆる療育と呼ばれる場所です。そこは発達がゆっくりな子どもたちが通う場所であり言語聴覚士のニーズがとても高い場所です。

私の小児言語聴覚士としての道は児童発達支援事業所から始まりました。働き始めた当初は悩みだらけでしたが、それらの経験があったからこそ今の自分がいます。

そんな私から少しでも児童発達支援で働く言語聴覚士が増えたり悩みの解消に役立てたらと思い本テーマを綴りました。

小児で働く言語聴覚士についての詳細は『小児言語聴覚士として働くには?』で解説しています。

児童発達支援における悩み

病院等で勤務している小児言語聴覚士は言語発達遅滞構音障害学習障害吃音などことばの悩みを抱えている人たちの訓練を行っています。

一方児童発達支援事業所で勤務している言語聴覚士はことばの練習だけでなく、子どもの社会性や着替えなどの生活動作を含む社会生活能力などの指導を行っていることが多いです。

もちろん言語聴覚士として言語指導に特化している事業所もありますが、ほんの僅かではないでしょうか。

言語指導特化している事業所であれば言語聴覚士としての知識を活かすことが出来ますが、そうでない生活全般に関わる事業所の場合は資格の活かし方に不安に感じる人も多いです。

初めて小児言語聴覚士として働く人にとってことば以外の機能も踏まえて支援を進めていくことに対して戸惑いを感じるかもしれません。

どうやったら言語聴覚士の資格を活かせるの?

全体発達を理解する

児童発達支援で勤務を続けると言語聴覚士だけの知識だけでは事足りないと感じることが増しました。

そのため保育や特別支援教育の本なども読み漁って知識として吸収したり療育アプローチと言われるものも調べたり。

「どうしよう?どうしたらいい?」という焦りの気持ちもありましたが、この気持ちがあったから自分を成長させてくれました。

言語聴覚士だからと言って言語面のみを支援対象とするのは難しくそれ意外にも着目することが必要不可欠です。

→これができるようになると後述する支援方法の大きな足掛かりになります。

比べないけど意識はしよう

そもそも活動するフィールドが違うということ。

医療現場で小児言語聴覚士として働いている人を見て「ことばに特化して訓練できて羨ましい」と思うかもしれません。児童発達支援は社会生活全般を対象としています。まさにトータルコーディネートが必要不可欠です。

私が児童発達支援事業所で勤務し始めた時も周囲から「児童デイの療育は…」と周囲の言語聴覚士や先生から言われたこともあります。

発達支援に携わる身としてそれを言われることが本当に悔しい気持ちでした。

そのため私は児童発達支援で働く言語聴覚士だからこそ他に負けないよう自己研鑽をしようと深く思いました。

自己研鑽として書籍の購読やセミナー参加、症例報告等を行ってきました。オンラインでのセミナーが増えてきた昨今ですが、私はリハノメというオンラインセミナーに登録をしていました。言語聴覚士に限らず他のセラピストの講義を聞くことも出来ます。医学的な内容も多いですが、発達領域の講義も多数ありお世話になりました。言語聴覚士に限らず他職種の講義も視聴できることも最大の魅力と思います。

PT.OT.STのための総合オンラインセミナー『リハノメ』

理想的な職場

①先輩言語聴覚士のいる場所

先輩言語聴覚士がいるということは児童発達支援での立ち回り方を教えてもらえます。

どのように評価しているのか、どうやって支援をしているのか。

これらを実際の現場で学べるということが小児言語聴覚士として理想的なスタートと言ってもいいかもしれません。

②発達支援に関してベテランのいる場所

発達支援を進める上で学ぶべきことは言語聴覚士としての知識だけではなく、「どのような支援方法があり、どのように支援を進めていくのか」ということも大切であると考えます。

そのため職種に関係なく発達支援に携わる期間の長いベテランや博識のある職員から学べるので「どうやって発達支援を行うのか」について学べるのではないでしょうか。

③伸び伸びと自己研鑽を積める環境

上記の①②以外の職場でも先輩職員から「一緒に考えよう」「取り敢えずやってみよう」のように暖かく柔軟に受け入れてくれる場所も素晴らしい環境ではないでしょうか。

しかし、事業所として初めての言語聴覚士として入職した場合は“啓発活動”から始める必要があります。

在職している指導員の人たちは言語聴覚士について知りません。

そのため言語聴覚士として自分は「どのようなことが出来るのか」「子どもたちにどのような利点があるか」を説明する必要があります。

これらを説明できないと言語聴覚士の重要性という理解が得られず知識や技術を発揮できずに終わってしまう可能性が十分に考えられます。

啓発活動ということから始めなければなりませんが、理解を得られると小児言語聴覚士としての道が切り開かれるのではないでしょうか。

アセスメントは検査だけではない

小児言語聴覚士として「どのように子どもたちの評価をしたらいいのか」と迷われるかもしれません。

評価なくして支援は進められないといっても過言ではありません。

評価のやり方として直接検査をする場合や行動観察から評価を行っていく方法がありますが、小児言語聴覚士が思い浮かべるものは以下のような検査ではないでしょうか。

発達・知能検査

新版K式発達検査2020(2001)、田中ビネー知能検査V、WISC-V(Ⅳ)、WPPSI-Ⅲなど

言語検査

国リハ式 <s-s法>言語発達遅滞検査 、新版構音検査LCスケールなど

言語聴覚士が実施する検査として上記のものを挙げましたが、検査は必ずしも事業所で用意されている訳ではありません。

寧ろこれらの検査を一つ以上保有している事業所の方が稀だと思います。

しかし、検査がなくても評価をすることは可能です。

評価方法にはフォーマルアセスメントインフォーマルアセスメントの2つがあります。

フォーマルアセスメント

統計学的な調査によって標準化されているもので検査者の主観は入りにくく、客観的な評価として結果が示される。発達検査・知能検査・言語検査はこれに含まれます。

インフォーマルアセスメント

どのような視点で着目するのかを評価者が自由に設定することが出来る(評価者の主観に依存)。

フォーマルアセスメントもインフォーマルアセスメントもそれぞれの特色がありますが、フォーマルアセンメントのような検査道具を事業所単位で購入することが困難であればインフォーマルアセスメントを行っていく必要があります。

インフォーマルアセスメントは評価者の主観に依存するため、他の評価者とは評価が異なるということが多々あります。

主観となると他の要因も含まれ正確な評価が難しいという印象があります。そのため、インフォーマルアセスメントを行う際は発達過程などを十分理解した上で取り組みましょう。

アセスメントに関しての詳細は「フォーマルアセスメントとインフォーマルアセスメントとは」で解説しています。

フォーマルアセスメントは使用しなくても知識を深めましょう

発達検査などの項目をそのまま支援の中で使用することはできませんが、「どのような意図があって検査が作られているのか」「年齢別の課題はどのような項目になっているのか」を知ることは発達支援でとても重要です。

またインフォーマルアセスメントを行うことによって、どのような着眼点で子どもたちの行動を見たら良いのか知る手立てとなります。

そのため「発達検査は実施しないから知らなくてもいいや」ではなく、子どもたちの発達過程などを知る目的などで知識として吸収する必要があります。

直接検査でなくても保護者や教員等な身近な人に聞き取って実施する質問紙のような検査も手立ての一つとして役立ちます。

CCC-2子どものコミュニケーション・チェックリスト
MSPA
FOSCOM(本来はS-S法の検査場面から行動観察を行いますが、実際の生活場面の参考にもなります)

もちろん発達支援を考える上で必ずしも検査は必須ではなく、プレイセラピーのように遊び場面で評価をすることも可能です。

どうやって支援を進めていく?

評価方法は上記の他にもたくさんありますが、評価をしたらそれで終わりではありません。

評価した結果に基づきながら支援を立案していきます。立案といても多岐に渡って存在しているアプローチ方法から選定するということはとても難しいです。

そのため、ここでは私がことばを促す方法として学んだアプローチ方法を紹介します。

※これからお話する方法は言語聴覚士としての知識・技術ではなく発達支援に関わる全ての人に知ってほしいことです。

運動療育や音楽療法など様々な療育サービスを提供している事業所が増えてきていますが、いずれも事業所も下記の療育アプローチ(考え方)を謳っている可能性が高いのではないでしょうか。

療育アプローチ

応用行動分析
TEACCH
認知行動療法

感覚統合
SST

様々なアプローチを学びましたが、この中でも応用行動分析(以下ABA)の考えを参考に進めることが多いため、ABAを中心に話を進めます。
応用行動分析の詳細は「応用行動分析(ABA)とは」で解説しています。

応用行動分析(以下ABA)にも様々な手法のような考え方がありABAアプローチの中でも早期高密度行動介入と呼ばれるEIBI(Early Intensive Behavioral Intervention)と自然的発達行動介入と呼ばれるNDBI(Naturalistic Developmental Behavioral Interventions)があり少しだけ紹介します。

EIBI

DTT(Discrete Trial Teaching)と呼ばれるものがあり支援者側が学習できる環境を作り出して机の上などで基礎的な学習の基盤の習得を目指していきます。

NDBI

PRTESDMJASPERなどが該当し日常の生活場面のように自然な環境の中で子どもの能力を引き出していきます。

PECS・ポーテージプログラム

ABAを取り入れたアプローチは多数存在していますが、私が好んで用いるアプローチにPECSポーテージプログラムがあります。

PECS

代替・拡大コミュニケーションシステム(AAC)の一つであり絵カードを通してコミュニケーションを図っていくものです。
コミュニケーションは要求から始まります。赤ちゃんも泣いて欲求を伝えてくれます。
ことば(音声言語)は手段であって目的は気持ちを伝えるということ。手段ばかりに捉われて本来の目的からかけ離れてしまうことも支援者の中では多いかと思います。PECSではこのようなコミュニケーションの本質が見えます。PECSを学習することで「なぜコミュニケーションを行うのか」「コミュニケーションの目的は?」等まさに行動1つ1つには意味があるということを改め確認することが出来ます。

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コミュニケーションは音声言語だけでなく、絵カードを使った方法もあります。

PECSを学ぶとコミュニケーションの本質が見えてきます。

なぜコミュニケーションを行っているのか。

その目的などまさに一つ一つの行動には意味があるという事を改めて確認することが出来ます。

ポーテージプログラム

社会性、言語、身辺自立、認知、運動、乳児期の発達の6つの発達領域を発達の順序性に沿ってアプローチをすることが出来ます。
ポーテージプログラムは保護者が中心となって取り組むものです。保護者が家庭で出来るように手立てを一緒に考えていくことも必要となりますし、行動の課題分析する必要があります。これに限った話ではないですが支援は分析が必要不可欠です。子どもにとって手助けはどれくらい必要か。一人でどこまで出来るか等。各発達領域は年齢ごとに分かれているため支援者も発達段階を知る機会となります。

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言語聴覚士としての支援は絵カードを使ってことばを促す方法が度々使われます。

絵カード呼称や絵カード理解など。今回は言語聴覚士としての支援方法というより発達支援全般で用いられる方法をお話しました。

言語聴覚士が行っている構音訓練読み書き練習などは他の記事で公開しているのそちらでお楽しみください。

応用行動分析学について知識を深める

私の経験ですが応用行動分析学は発達支援を進める上で非常に役立っています。

小児言語聴覚士を目指している私にお勧めするとしたら応用行動分析学について基礎的な部分だけでいいので本の購読を進めたいです。

基礎的な部分であればインターネット検索すればたくさんの情報が出てきますし、文献の閲覧もおすすめです。

私自身応用行動分析については学びの途中であり学び尽くすということはありません。

子どもの支援に関わっていると「これって応用行動分析の考え?」と気づきがあると思います。

その際に手元にある資料を見返して自身の学びにしてみてください。

小児の世界を知るという意味では下記の書籍にお世話になりました。

発達障害の子の療育が全部わかる本 (こころライブラリー)

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小児の言語聴覚士と言えば機能性構音をイメージする人も多いかと思いますが、児童発達支援では専門的にというより療育全体的な介入方法を学ぶことが先決でした。

もちろん言語聴覚士に特化した仕事を行う場合は言語聴覚士の専門分野を極めて頂きたいですが。

応用行動分析の学びもそうですが、今後勤務する場所がどのような所か。そこに焦点を当て学びを追求していきましょう。

まとめ

これらの話は言語聴覚士特化型の事業所、個別や集団によっても異なってくるかと思います。

小児言語聴覚士として入職して「どうやったら言語聴覚士の資格を活かせるだろう」と悩むことがあるかもしれません。

私も小児領域に入職した際は「どうやって言語聴覚士の理解を得られるか」「どうやって評価をしよう」「どうやって支援を進めようか」など数えきれないくらいの悩みがありました。

昨今では小児言語聴覚士が少しずつですが増えてきて心嬉しく思います。

しかし働いてみると「言語聴覚士としてどうやって働けば?」と入職前とギャップを感じる人も増えてきている印象です。

そのように悩みを抱えている人たちにこの記事を読んでもらい、少しでも悩みを解消してもらえたらと思います。

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