アサーティブコミュニケーションとは?~安心して気持ちを伝えられる方法を子どものうちから~

友達や家族に、自分の気持ちや意見をうまく伝えられなくて悩んだことはありませんか?

たとえば、言いたいことがあるのに黙って我慢してしまったり、逆にカッとなって怒鳴ってしまったり…。

そんな悩みを減らすヒントとして、アサーティブコミュニケーションという考え方があります。

アサーティブコミュニケーションとは、自分の気持ちや意見を率直に、しかし相手も尊重して伝える方法のことです。

簡単にいうと「相手も自分も大切にする自己表現」とも表現されます。

単に自分の主張を通すだけでなく、相手の話もしっかり聞きながら伝えるので、コミュニケーションを円滑にするスキルであり、仲間外れやいじめなど人間関係のトラブルを防ぐ効果も期待されています。

ここでは、小学校低学年から高学年の子どもにもわかりやすいように、アサーティブコミュニケーションの基本とその重要性、そして日常生活での活かし方を紹介します。

アサーティブコミュニケーションってどういうこと?

アサーティブコミュニケーションでは、自分も相手も大事にしながら気持ちや考えを伝えます。

具体的には、場に合った冷静な方法で自分の意見を正直に言い、同時に相手の意見も尊重して受け止める伝え方です。

ポイントは「正直に伝える」と「相手を思いやる」の両方を大切にすることにあります。

では、なぜこのような伝え方が大事なのでしょうか?それは、攻撃的すぎる伝え方や我慢しすぎる伝え方では、どちらも問題が起きやすいからです。

自分を抑えて何も言わないでいると、後で「わかってもらえなかった…」と悲しくなったり、ストレスや怒りがたまってしまうことがあります。

逆に、思いのままに相手を責め立ててしまうと、相手は「大切にされていない…」と感じて怒ったり、あなたから離れていってしまうかもしれません。どちらの場合も、お互いにとって良い結果にはなりません。

アサーティブな伝え方ができれば、伝える側も伝えられた側も「ちゃんと尊重してもらえた」と感じ、気持ちよく問題を解決できます。

伝える人自身も相手に気持ちをわかってもらえるので心のモヤモヤが減り、コミュニケーションによる人間関係の悩みが少なくなります。

お互いが安心して本音を話し合える関係を築くためにも、子どもの頃からこの伝え方を身につけておくことはとても大切です。

攻撃的?受け身?3つの伝え方の違い

コミュニケーションの自己表現には、大きく分けて3つのタイプがあります。自分の伝え方のクセを知るためにも、それぞれの特徴を見てみましょう。

  1. 攻撃的な伝え方(アグレッシブ)
     自分のことしか考えず、言いたいことを一方的にぶつける表現です。命令口調で「○○しなよ!」と言ったり、怒鳴ったり、相手を脅したりするような強引な主張がこれに当たります。
  2. 受け身な伝え方(ノン・アサーティブ) 
    自分の気持ちを抑えてしまい、相手に合わせて言いたいことが言えない表現です。「本当は嫌だけど…まあいいか」と我慢してしまったり、何か言おうとしてもモジモジして言えなかったりします。
  3. アサーティブな伝え方 
    相手の気持ちに共感・配慮しながら、自分の言いたいこともしっかり伝える表現です。
    たとえば何かを断る場面でも、頭ごなしに「ダメ!」と言うのではなく「ありがとう。でも今はできないんだ」と感謝や理由を添えて丁寧に伝え、さらに「また今度誘ってね」と代わりの提案までできるような柔軟な伝え方です。
    相手を傷つけず、自分も我慢しすぎずにすむ理想的なタイプです。

小学校低学年と高学年、それぞれの理解に合わせて

アサーティブコミュニケーションの考え方は、小さな子どもから大人まで役立ちますが、子どもの発達段階に応じた伝え方の工夫も必要です。

小学校低学年くらいの子どもは、まだ複雑な言い回しや抽象的な話の理解が難しいです。

難しいカタカナ用語は使わず、「上手な伝え方」など優しい表現で説明すると良いでしょう。

まずは「うれしい」「悲しい」「嫌だ」など気持ちを表す簡単な言葉を使って、思いを伝える練習から始めましょう。

嫌なときには「嫌だ」、悲しいときは「悲しい」と言ってみる。そうした一言でも立派な自己表現です。

小学校高学年になれば、抽象的な概念も理解できるようになります。

「アサーティブ」という言葉そのものを教えてみても良いかもしれません。

ただし概念を伝えるときは必ず具体例とセットにすることがポイントです。

3つの伝え方の違いを実例で示し、「どう言えばお互い気持ちがいいかな?」と子ども自身に考えてもらうことが大事なことです。

高学年の子は相手の立場を想像する力も育っているので、「自分も相手も大切にするにはどう伝えればいい?」と問いかけ、一緒により良い言い方を考えてみるのも効果的です。

日常の中で実践してみよう!~場面別の具体例~

では、学校や家庭の具体的な場面で、アサーティブな伝え方をどのように実践できるか考えてみます。

攻撃的・受け身・アサーティブ、それぞれの対応の違いを比べながら見ていこうと思います。

学校:給食当番で不満があるとき

クラスで給食当番をしているとき、もし自分ばかり大変な仕事をしていて不公平だと感じたらどうするでしょう?

攻撃的な対応:「なんで私ばっかりやらなきゃいけないの!サボってないで手伝ってよ!」と相手を責めます。
怒った口調で文句を言えば、相手も嫌な気持ちになります。

受け身な対応:何も言わずに自分が我慢してやってしまいます。「不公平だな…」と心の中ではモヤモヤするけれど、黙って引き受けてしまいます。これでは自分だけ疲れて不満が残ってしまうこともあります。

アサーティブな対応:「一人で全部やるのは大変だから、手伝ってくれたらうれしいな」と穏やかにお願いしてみます。
「私ばかりたくさんやっているみたいで少し悲しい」と自分の気持ちを伝えた上で、「一緒に配膳しよう?」など協力を提案します。
こう言われれば、相手も「じゃあ手伝うよ」と前向きに受け止めてくれるのではないでしょうか。

学校:友達に嫌なことを言われたとき

例えば友達から「お前ヘタだな」と傷つく一言を言われてしまったら…?

攻撃的な対応:「うるさい!お前だって下手なくせに!」と怒鳴り返したり、叩いたりしてしまいます。
これではケンカになってしまい、友達との仲直りも難しくなります。

受け身な対応:何も言えずに黙り込んだり、その場から逃げてしまいます。本当は悲しいのに我慢して笑ったふりをするかもしれません。
しかし相手は冗談だと思ったままで、あなたが傷ついたことに気づかないかもしれません。

アサーティブな対応:「今の言葉は悲しいな。そんなふうに言われるとイヤだよ」と自分の気持ちを落ち着いて伝えます。
そして「やめてほしいな」としっかりお願いしましょう。
「仲良くしたいけど、そう言われるとつらい」と付け加えても良いですね。こう伝えれば、相手もハッとして謝ってくれるかもしれませんし、少なくともあなたが傷ついたことは伝わります。

家庭:兄弟姉妹との場面

家庭でもアサーティブな伝え方は大切です。

例えば兄弟がおもちゃを勝手に使ってしまったとき、攻撃的に「勝手に触るな!」と怒鳴ればケンカになり、逆に何も言わず我慢すれば不満が残ります。
その代わりに、穏やかに「それ、まだ使ってるんだ。終わったら貸してくれる?」とお願いの形で伝えてみてはどうでしょうか。
自分の要求を落ち着いて伝えつつ相手にも配慮した言い方なので、ケンカにならずに済む可能性が高まります。

このように、アサーティブな伝え方をすればお互い気持ちよく問題を解決できます。

攻撃的だと言い争いになり、受け身だと不満がたまりがちですが、アサーティブであれば相手も自分もスッキリする落としどころを見つけやすくなります。

家庭や学校で育む「伝え方」

子どもがアサーティブなコミュニケーションを身につけるためには、周りの大人のサポートが欠かせません。

ここでは家庭や学校でできる支援のポイントをいくつか紹介します。

お手本は大人から

子どもは大人の姿をよく見ています。親や先生が日頃からアサーティブな伝え方を心がければ、子どもも自然とそれを真似るようになります。

逆に大人が攻撃的だったり何でも我慢するような話し方をしていると、子どもも同じような話し方を身につけてしまう恐れもあります。

まずは大人自身が上手な伝え方の手本を示すことが大切です。

大人が自分の気持ちを穏やかに伝え、子どもの気持ちに耳を傾けていれば、子どもは「自分の気持ちが尊重されている」と感じて親への信頼も育ち、自分も同じように伝えようとします。

日常会話で練習

特別な場面だけでなく、普段の会話の中でアサーティブなやり取りを練習してみてはどうでしょうか。

例えば子どもが何か要求するときには、「○○して!」「ダメなの?」ではなく「○○してくれると嬉しいな」と言えたら褒めてあげます。

逆に親が子どもにお願いするときも、頭ごなしに命令するのではなく「~してくれるかな?」のような表現もいいかもしれません。

日常的に「ありがとう」「ごめんね」を伝え合う習慣も、相手を尊重するコミュニケーションの土台になります。

「こういうときどう言う?」と考える習慣

テレビのアニメや本の中で、登場人物がケンカしたり誰かが悲しんでいる場面があれば、ぜひ子どもに問いかけてみましょう。

「もし◯◯ちゃんだったら、どう言えば良かったかな?」と一緒に考えることです。

親子で様々なシチュエーションの伝え方クイズを出し合うことも楽しいのではないでしょうか。

そうすることで、「こんな場面ではこう言えばいいんだ」という伝え方の引き出しが子どもの中に増えていくかと思います。

おわりに

アサーティブコミュニケーションは、子どもが自分の気持ちも相手の気持ちも大切にするための素敵なスキルです。

最初は難しく感じるかもしれませんが、練習を重ねるうちに少しずつ身についていきます。

子どもたちが自分の言葉で気持ちを伝え合えるようになれば、友達との関係も今よりずっと良くなります。

実際、「自分も相手も大切にする伝え方」ができる環境では、子どもたちは「自分は大切にされているんだ」と感じ、自尊心が育つとも言われています。

そして、自分自身も周りの人も尊重できる子どもに成長していくはずです。

大人も子どもも、お互いが安心して本音を伝え合える関係を目指して、ぜひ日々の生活の中でアサーティブな伝え方を少しずつ実践してみてはどうでしょうか。

子どもたちが「ちゃんと伝えられた!」「わかってもらえた!」という成功体験を重ね、健やかなコミュニケーション能力を育んでいけるように見守っていきましょう。

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