その子にとって「わかる」と「できる」は違うという話
発達支援の現場でよく耳にする「ソーシャルストーリー」と「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」。
どちらも子どもの社会性を育てる方法ですが、実はこの2つには大きな違いがあります。
今回はその違いをわかりやすく整理しながら、どう使い分ければいいのかを考えていきます。
まず、ソーシャルストーリーとは?
ソーシャルストーリーは、ある特定の場面について「そのとき、どんなことが起きるのか」「どんな行動が望ましいのか」を、短い文章でわかりやすく伝えるものです。
たとえば…
■「病院に行く前に読むストーリー」
■「お友だちと遊ぶときに気をつけること」
■「手を洗う理由についての説明」
など、その子がこれから直面するであろう状況を、やさしい言葉と視覚的なイメージで伝えることが特徴です。
ポイントは、「教え込む」ことではなく、安心して状況を理解できるようにすること。
「こうしなさい」ではなく、「こんなことがあるよ」「こうするといいことがあるよ」と伝える語りかけのような文章です。
子どもによっては、突然の出来事や予測できない場面に不安を感じやすいこともあります。
ソーシャルストーリーは、そんな不安を和らげてくれる「心のガイドブック」のような存在です。
一方、ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは?
SSTは、社会の中で必要とされるスキルを実際に「練習」して身につけていく方法です。
たとえば、
■「順番を守る」
■「あいさつをする」
■「誘いを断るときにどう言えばいいか」
など、具体的なやりとりをロールプレイで練習したり、他の子のやり方を見て学んだりする中で、行動のパターンを学んでいきます。
SSTはどちらかというと「できるようになる」ことが目的。
練習してみてうまくいかなかったら、やり直してフィードバックをもらう。
そんなやりとりの中で、少しずつ社会的なふるまいを身につけていきます。
この2つ、どう違うの?
一言でいえば…
ソーシャルストーリーは「わかる」を支えるもの
SSTは「できる」を育てるものという違いがあります。
たとえば、こんな使い分け
ある子が、集団遊びで自分の順番になるまで待つのが苦手だったとします。
このとき、いきなり「SSTで順番を守る練習をしよう」としても、本人にとっては「なぜ待たなきゃいけないの?」という疑問が残ったままです。
そこでまずはソーシャルストーリーを使って、「順番を待つ意味」や「そのとき何が起きるか」を説明します。
その上で、実際にロールプレイで「待つ体験」をして、うまくできたらほめる・支える。
このように、「理解」と「練習」をセットにすると、子どもの納得感も高まり、スムーズな定着につながります。
大切なのは、「その子にとって必要な支援」を見極めること
子どもによっては、見通しが持てるだけで行動が安定する子もいれば、繰り返しの練習があって初めて身につく子もいます。
■状況の理解に不安がある → まずはソーシャルストーリー
■理解はできているけど行動が難しい → SSTで練習
■どちらも必要 → 組み合わせて支援!
と、子どもの「今の状態」に合わせて、支援方法を選ぶことがなにより大切です。
おわりに
ソーシャルストーリーとSSTは、似ているようでアプローチがまったく異なります。
だからこそ、それぞれの特性を理解して上手に使い分けることで、支援の効果もぐっと高まります。
「わかる」と「できる」は違う。
でも、どちらも子どもにとっては大切なステップです。
その子が安心して社会に参加できるように。
理解と練習の両輪で、寄り添っていけたらいいですね。