ひらがなの濁音(「が」「ざ」「だ」「ば」など)につまずいてしまうお子さん、実はとても多いのです。「か」と読めてしまう、「てんてん」を書き忘れてしまう……。
親御さんや指導者の方としては「なぜ?」「どう教えればいいの?」と悩まれることもあると思います。
濁音の習得には、実は高度な「聴覚的処理」「視覚的処理」「音韻意識」の連携が必要です。
この記事では、なぜ濁音が難しいのかという背景と、ご家庭や教室で実践できる具体的なサポート方法について解説します。
「てんてん」の壁/なぜ濁音が苦手なのか?

濁音のつまずきには、大きく分けて「音が聞き分けにくい(入力の問題)」と「文字のルールが定着しにくい(認知・出力の問題)」という2つの側面があります。
お子さんがどのタイプに当てはまるか観察することで、アプローチが変わります。
音の聞き分け(聴覚的要因)
私たち大人は「か(ka)」と「が(ga)」を全く別の音として瞬時に判断していますが、この二つの音は口の形や舌の位置がほぼ同じです。違いは「声帯が震えているか、いないか」という非常に微細な点にあります。
■清音(震えない): か、さ、た……
■濁音(震える): が、ざ、だ……
聴覚的な処理が少し苦手なお子さんにとって、この「わずかな振動の有無」を聞き分けるのは、私たちが外国語の微妙な発音を聞き分けるのと同じくらい難しいことなのです。
視覚的な認識(視覚的要因)
ひらがなは本来、曲線的な文字ですが、濁点は「右上にある小さな二つの点」です。
■図地反転(ずちはんてん)の弱さ
文字(図)と背景(地)の区別がつきにくいお子さんの場合、小さな点が「文字の一部」ではなく「ゴミ」や「汚れ」に見えてしまい、認識から漏れてしまうことがあります。
■視野の焦点
文字の本体(例:「か」)に集中しすぎると、右上の端にある点まで注意が向かないことがあります。
ルールの理解(認知・音韻意識)
「『か』に点々がつくと『が』に変身する」というルールは、実は非常に抽象的です。
「か」という音と「が」という音が、文字の形としては「親戚」であるという概念が、直感的に結びつかないケースです。
特に「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」のような異字同音の使い分けで混乱が深まることもあります。
濁音理解を促す具体的なアプローチ

「何度も書いて覚える」という反復練習は、苦手なお子さんにとっては苦痛になりがちです。
五感(視覚・触覚・聴覚)をフル活用した、遊び要素のある練習方法が効果的です。
音の違いを「体感」する(聴覚・触覚)
まずは文字を書く前に、「音が違う」ことを体で感じ取ります。
のど仏タッチ法
これが最も基本的かつ効果的な方法です。
①お子さんの手を、お子さん自身の喉(のど仏あたり)に当てさせます。
②「か、か、か」と言わせます。(震えません)
③「が、が、が」と言わせます。(ビリビリと震えます)
④「ほら、怪獣さんの声だとビリビリするね!」と、振動=濁音という感覚をインプットします。
ジェスチャー読み
音のイメージを体の動きで表現します。
■清音(か)
手をパンと叩く、または軽くジャンプする(軽いイメージ)。
■濁音(が)
足をドシンと踏み鳴らす、または壁をドンと押す(重いイメージ)。
体全体を使って「重たい音(濁音)」を表現することで、記憶に残りやすくなります。
視覚的に「点々」を意識させる(視覚)
「点々が見えていない」または「無視してしまう」場合の対策です。
色分け強調法
黒い鉛筆一色で書くと、点々が埋もれてしまいます。
■方法
親御さんが「か」を黒で書き、お子さんに赤や青のペンで点々を書き足させて「が」に変身させます。
「魔法の石(点々)をつけると、音が変わるよ!」とストーリー性を持たせると良いでしょう。
マッチング・カードゲーム
市販のカードや手作りカードを使います。
■「か」のカードと「点々(〃)」の透明カード(クリアファイルを切って油性ペンで書いたもの)を用意します。
■「か」の上に透明カードを重ねて「が」にする遊びをします。
「変身ごっこ」を通じて、「元の文字+点々=濁音」という構造を視覚的に理解させます。
書くときのミスを減らす
読みができるようになっても、書くときに忘れてしまう場合の対策です。
「あとから点々」チェック
文章を書く際、最初から完璧に書かせようとせず、まずは書ききらせます。
その後に「点々探偵」になりきって、「点々が必要な場所はないかな?」と見直す時間を設けます。
書く作業(運動)と、点々を確認する作業(点検)を分けることで、脳の負担を減らします。
リズム書き
書きながら声に出します。
「か・き・く・け・こ」ではなく、「が・ぎ・ぐ・げ・ご」と書くときに、「が(濁点をつけるタイミングで)・ん・ん!」と、リズムをつけて書く動作を促します。
「ん・ん」で点を打つ動作を習慣化させます。
焦らず「スモールステップ」で進める

濁音の習得が遅れていると、「この先、漢字や作文はどうなるんだろう」と不安になるかもしれません。
しかし、ここでのつまずきは「能力の欠如」ではなく、「学び方の特性(スタイル)の違い」であることがほとんどです。
叱らずに「発見」を褒める
「また点々忘れてる!」と指摘するよりも、「おっ!ここはしっかりビリビリの音が聞こえたね」「怪獣の点々、発見できたね」と、できた部分に注目してください。
自己肯定感を守ることが、学習意欲を持続させる最大の燃料になります。
環境を整える
部屋が騒がしいと、微妙な音の違いを聞き取るのが難しくなります。
濁音の練習をする時だけはテレビを消し、静かな環境を作るなどの配慮も有効です。
まとめ
濁音(が・ざ・だ・ば)が苦手な理由は、単なる練習不足ではなく、音の聞き分けや視覚的な注目の仕方に特性がある場合が多いです。
■喉の振動で「音の違い」を体感させる。
■色やカードを使って「点の存在」を視覚化する。
■変身ごっこやリズム遊びで楽しく定着させる。
この3つを軸に、お子さんが「わかった!」「聞こえた!」と感じられる瞬間を積み重ねてみてはどうでしょうか。