ACTの理論的枠組みとパラダイムシフト

従来のCBT(認知行動療法)との違い
アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)は、認知行動療法の「第3の波」として注目されている心理療法です。
従来のCBTが「ネガティブな思考を修正すること」に焦点を当てるのに対し、ACTは「思考や感情との関わり方(文脈)」を変えることを重視します。
最大の目的は症状の除去ではなく、「心理的柔軟性」の向上にあります。
これは、不快な感情を避けようとする「体験的回避」から脱却し、自分の価値観に沿った行動を選択できる状態を指します。
関係フレーム理論(RFT)と機能的文脈主義
ACTの土台には、言語と認知の仕組みを解き明かす「関係フレーム理論(RFT)」があります。
人間は言葉によって未来を不安視したり、過去を悔やんだりする能力を持っていますが、それが時に苦痛を生み出す原因にもなります。
また、哲学的な基盤として「機能的文脈主義」を採用しています。
これは「その考えが正しいか」ではなく、「その考えを持つことが、その人の人生にとって役に立つか(有用性)」を重視する考え方です。
心理的柔軟性を育む6つのコア・プロセス(ヘキサフレックス

ACTでは、「ヘキサフレックス」と呼ばれる6つのプロセスを通じて心理的柔軟性を高めていきます。
■認知的脱フュージョン
思考を「絶対的な真実」としてではなく、単なる「言葉」や「脳内の出来事」として客観的に眺めるスキルです。
■受容(アクセプタンス)
不快な感情を追い払おうとせず、心の中にそのままのスペースを作ることです。
■今、この瞬間との接触
過去の後悔や未来の不安に囚われず、現在の体験にマインドフルに意識を向けます。
■文脈としての自己
思考や感情が流れていく「場」としての自分(観察する自己)に気づくことです。
■価値(バリュース)
人生において自分が大切にしたい方向性や、ありたい姿を明確にします。
■コミットされた行為
たとえ困難があっても、自分の価値に沿った具体的な一歩を踏み出し続けることです。
クライアントの理解を助けるメタファー(比喩)の活用

ACTのセッションでは、論理的な説明よりも直感的に伝わる「メタファー」が多用されます。
■モンスターとの綱引き
不安(モンスター)と必死に綱引きをするのではなく、「綱を離す」ことで、自由な両手を使って自分の行きたい方向へ進めるようになります。
■バスの乗客
人生というバスの運転手であるあなたに対し、乗客(ネガティブな思考)が騒ぎ立てても、彼らを降ろそうと躍起になる必要はありません。騒音を背にしながら、目的地へとハンドルを切ることが可能です。
■空と天気
心は広大な「空」であり、感情や思考は移り変わる「天気」に例えられます。
嵐が来ても、空そのものが傷つくことはありません。
臨床で役立つ視覚的ツール:マトリックスとチョイス・ポイント

複雑な概念を整理するために、以下の2つのツールが頻繁に活用されています。
ACTマトリックス
「内面の体験」と「外側の行動」、そして「価値に向かう動き(Toward)」と「苦痛から離れる動き(Away)」の2軸で整理する図式です。
今自分がどの象限にいるかに気づくことで、行動の選択を容易にします。
チョイス・ポイント
日常生活の困難な場面を「分岐路」として捉えます。
ネガティブな思考にフック(釣り針)をかけられて「Away」へ進むのか、スキルを使って「Toward」へ進むのかを明確にするためのツールです。
価値の明確化/人生のコンパスを見つける

ACTにおける「価値」は、到達して終わる「目標」とは異なります。
- 目標:山の頂上に着くこと(達成すれば完了)。
- 価値:西へ向かって歩き続けること(終わりなきプロセス)。
支援現場では、「死人テスト(死人にできないことを目標にしない)」などを用いて、単なる「不安の解消」ではなく「生きた人間としての能動的な行動」を引き出す支援を行います。
おわりに/支援者としてのあり方
ACTを導入する際、クライアントから「不快なことを我慢しろということか」といった抵抗を受けることもあります。その際は論争せず、常に「そのやり方は、あなたの人生を豊かにするのに役立っていますか?」という有用性の視点を共有することが大切です。
何より、支援者自身が日々の生活の中で心理的柔軟性を実践し、マインドフルな姿勢でクライアントと向き合うことが、最も効果的な支援の土台となります。
本記事はAIを活用しています。
参考文献・関連サイトのご紹介
本記事は、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の標準的な理論に基づき、臨床での実践的な視点を交えて解説しています。ACTについてより深く学びたい方や、原典にあたりたい方は、以下の書籍やウェブサイトをご参照ください。
1. おすすめの入門書・専門書
- ラス・ハリス 著『よくわかるACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー) 明日から使えるACT入門』 (星和書店)ACTの基本的な考え方が非常に分かりやすく解説されており、初心者の方に最適です。本記事で紹介したメタファーなども豊富に掲載されています。
- スティーブン・C・ヘイズ 他著『ACTをはじめる:セッションを前にして知っておくべきこと』 (星和書店)ACTの創始者たちによる実践ガイドです。理論的背景から具体的なセッションの進め方まで、より専門的な知識を深めたい方におすすめです。
2. 関連団体・情報サイト
- ACT Japan(日本ACT学会)(https://www.act-japan-acbs.jp/)日本におけるACTの研究と普及活動を行っている学術団体です。学術大会の情報や、ACTに関する様々なリソースが提供されています。
- Association for Contextual Behavioral Science (ACBS) (https://contextualscience.org/)ACTを含む文脈的行動科学の世界的なコミュニティです。英語のサイトですが、世界中の研究知見や豊富な資料(一部日本語もあり)にアクセスできます。
