ことばを促す方法としてジェスチャーや幼児語・オノマトペを使用すること、声掛け(関わり方)を工夫するなどがあります。
その中でも絵カードを用いた絵カード交換式コミュニケーションシステム(以下PECS)というものもあります。
絵カードを用いることによってことば(音声言語)を話す頻度が減るのではないかと言われることも多いですが、そのようなエビデンスは存在しません。
今回はそのような誤解も多いPECSについてお話します。私も個別指導ではPECSを用いたことばの発達指導をすすめています。
PECSとは?!
PECSはことばによるコミュニケーションに不安がある子どもを対象にコミュニケーションを出来るようにするものです。
ことばの発達がゆっくりの子どもから、コミュニケーションが苦手な子どもなど様々な子どもに対して用いることが出来ます。
ことばの発達やコミュニケーションに困っていない方でも構文指導や数・文字概念などの習得を目的として使用することも多いです。
PECSは6つのフェーズ(段階)に分かれており、絵カード(または文カード)を渡すことで要求を伝えるというものです。
ことばの発達がゆっくりな子どもは伝えたい気持ちがあってもその手段がないため、1人で悩みを抱えてしまいます。音声言語も絵カードも全てはコミュニケーションするためのものです。
音声言語は苦手だけどPECSであれば「伝えたい」という思いが溢れ人とのやりとりも増えてきます。
このやりとりが増えることによって音声言語の獲得にも繋がっていきます。

PECSの6つのフェイズ
PECSはカードを使って相手に気持ちを伝えるというもので習得には6つのフェイズがあります。
6つのフェイズ
フェイズⅠ コミュニケーションの仕方
フェイズⅡ 距離と持続性
フェイズⅢ 絵カードの弁別
フェイズⅣ 文構成
フェイズⅤ 応答による要求
フェイズⅥ コメント
フェイズⅠから始め少しずつ学習の進捗状況を確認しながら他のフェイズへ移行していきます。
詳細はPECS公式ホームページを参照してみてください。

PECS使用のメリット・デメリット
メリット
気持ちを伝えられるという点が最大のメリットです。
音声言語ほど何でも伝えられるという訳ではありませんが、コミュニケーションを図るという一歩としては素晴らしいものです。
単語そのものを伝えるだけでなく「◯へ行きたい」と構文指導の学習や形容詞、動詞、数・文字概念の学習としても有効活用することができ、幅広い学習場面で用いることが多いです。
デメリット
PECSはコミュニケーションを促進するため非常に有効なシステムです。
音声言語の頻度が減るという声も上がりますがそれは事実ではなく、逆に音声言語が促進されるという報告もあります。
音声言語の語彙数が増えてきたらPECSから音声言語に移行する指導を実施するためコミュニケーションの土台作りとして非常に優れます。
デメリットを挙げるとすれば、絵カード作りに労力を必要とすること。
伝えたい物の数だけカードが必要となるため絵を描いたり、パソコンで編集するなど様々な工程があるため、大変な作業となります。
PECSはコミュニケーションブックとして必要なカードを貼って用意しますが、必要とするカードがなかった時に気持ちを伝えにくいということ。
デメリットを挙げるとしたらこのような点ではないでしょうか。
デメリットはありますがコミュニケーションの手立てやことばの学習としては非常に優れたシステムです。

PECSはどこで練習するの?!
PECSはご家庭でも手軽に練習をすることが出来ますが、公式サイトのワークショップを受講することをお勧めします。
ワークショップではコミュニケーションノートを使用して実演することや受講者同士で練習する機会もあり書籍だけでは得られない経験ができます。
自己学習される方は実際のPECSのマニュアルを購読するだけでなく、PECSの概念について理解したい人は以下の書籍もお勧めです。
PECS自体は知っているが導入は出来ていない。もしくはPECSを異なった方法で理解している方も多い印象です。
療育施設や学校で導入している場所も少なくないため、PECSを学習している支援者もいるかもしれません。
もしそのような支援者がいたらPECS実施場面を見学させてもらうことや実施内容について教えてもらいましょう。
まとめ
PECSは学習すべきポイントが多いためワークショップだけでなく自己学習も必要ですが手軽に家庭でも取り組めるのでおすすめです。
ことばは音声(言語)として注目されがちですが、「話してほしい」という気持ちは当事者ではなくそれ以外の人の気持ちです。
話すことを苦手とする人たちが1番思っていることは「伝わってほしい」ということです。
この気持ちを引き出すための手法としてPECSを選択肢に入れることは何ら不思議ではありません。少しでも多くの人にPECSの存在について知ってもらえたら幸いです。