応用行動分析(ABA)とは

こんにちはコトノハ教室です。

近年、応用行動分析(以下ABA)という言葉を聞くことが増えてきました。

保育・教育現場だけでなく、上司と部下や顧客との消費者との関係性の中でも使われるなど幅広い場所でABAを用いられています。

発達支援の中でABAアプローチと呼ばれることもありますが、ABAとは本来は学問そのものを指します。

今回はそのような応用行動分析についてお話です。

行動とは

行動と聞くと「動くこと」とイメージすると思います。

行動という言葉は簡単そうに見えて説明すると難しく感じませんか?行動という言葉を調べるとたくさんの説明が出てきます。

応用行動分析で使われる行動の意味の説明の一つとして死人テストというものがあります。

死人テスト

死人に出来ないことを行動として定義する

例えば泣くという現象で考えてみましょう。泣くというのは生きている人間しか出来ません。

そのため泣くという現象は行動として分析することが出来ます。

分析を始める前にまずはそれが行動なのかどうかを見極めていく必要があります。

もしこれに当てはまらなければ応用行動分析を用いて考えることは出来ません。

応用行動分析では三項随伴性が大切

ABAを用いる際はABC分析で一連の事象について分析していきます。

①直前の事象(Antecedent)②行動(Behavior)③結果(Consequence)の3つの要素の頭文字を取ってABC分析と言います。

この3つの関係を示すことを三項随伴性ということもあります。

ではこのABC分析を用いて事例を考えてみます。
【事例】お菓子売り場の前を通ったら泣いてしまったためお菓子を買った。

ABC分析を用いると上記図のように分けられます。

この例では泣くことによってお菓子を買ってもらえました。

このように行動の結果、要求が叶うことを強化、お菓子そのものを強化子と言います。

この例では、泣いたらお菓子を買ってもらえたということは子どもにとっては嬉しいことです。

そのため、泣けば買ってもらえると学習した可能性があります。

子どもにとっては嬉しいことですが、泣いて買ってもらうことは好ましくない行動です。

お菓子を買ってもらいたかったら「指さし」「言う」等の手段を用いて買ってもらいたい要求を伝えたいです。

そのため、好ましくない行動の時は異なる行動を学習していく必要があります。

余談として直前の事象には弁別刺激確率操作という2つの要素が存在します。
弁別刺激は、視覚や聴覚などによって情報を受け取ること
例えば棚に並んだお菓子を見て物を欲した際は視覚情報により誘発されたことになります。

確率操作は、状況によって好みが変化すること
例えば買い物直前にお菓子をたくさん食べて満腹状態であったとしたら欲することはなかったかもしれません。逆に空腹状態であればより欲する気持ちが強くなります。

これらの要素によって行動の出現頻度が異なるため類似した環境であっても行動が起きない場合も多々あります。

行動の機能


なぜそのような行動をするか理由があります。

その理由を行動の機能として4つに分けられます。

行動の機能

要求
✅注目
逃避・回避
自己刺激

例えば発声するという行動があったとしたら、発声するという行動は要求注目逃避・回避自己刺激のどれかに当てはまります。

実際には要求だと思っていた行動が本当は自己刺激等、他の機能である可能性もあるため様々な可能性を考えて分析していきましょう。

行動の結果生じる効果

行動した結果どのようになったか、または今後どうなるか考えることが支援に繋がります。

上記始めの例では子ども目線では泣いた結果お菓子を買ってもらえたという事実が生まれました。

お菓子を貰えるというの喜ばしいことです。そのため今後もお菓子を買ってもらうために泣くという行動が増えることが推測できます。

ABAでは何かが得られた結果行動が増えることを正の強化と言います。他にも負の強化、正の罰、負の罰ということばもあります。

ABAで言うということばは何らかが得られたことを言います。
は何かがなくなったこと。
強化は行動が増えること。
は行動が減ること。

応用行動分析の消去手続きとは?

好ましくない行動があった時は、消去手続きを行います。

泣くという行動は①直前の事象(お菓子売り場の前を通る)によって誘発されました。

そして②行動(泣く)によって③結果(お菓子を買ってもらえる)が引き起こされました。

この好ましくない行動(泣く)を無くすために行動の前後の事象を変えていく必要があります。

前後の事象ということは
①直前の事象
結果のことです。

これらの事象を変えていきましょう。

①直前の事象
→お菓子売り場の前を通る
お菓子売り場の前を通らなければ泣くという行動は出ない。

実際には環境を変えていくことが大切になってきますが、実際の生活場面においては避けて通れない場面が出てくるかもしれません。そのため③直後の事象を変えて行動を消去することが必要になります。

結果
→お菓子を買ってあげる(もらえる)
泣いてもお菓子は買ってあげない。お菓子を買わないことによって「泣いても買ってもらえない」と学習する必要があります。

このように行動の直後の事象を変えることを消化手続きと言います。

消去手続の注意点

消去手続きを実際に行うとすぐに好ましくない行動はなくなりません。

「泣いてもお菓子を買わない」ことを根気強く続ける必要があります。

そして消去手続きをすると「泣いてもなぜ買ってくれないの?」と泣くという行動が増えますが、消去手続きを進める上で必ず通る道です。

このように消去手続きをしている時に行動(泣く)が増えていくことを消去バーストといいます。

消去バーストが出ても消去手続きは継続しなければなりません。もし消去バーストの最中に強化(お菓子を買ってあげる)をしてしまうと、その行動(泣く)は今までよりも増大します。

この消去バーストが必ず来ることを念頭に置いて取り組みましょう。そして家庭場面だけでなく、園や学校でも徹底して取り組んでいく必要があります。

分化強化

お菓子を買ってほしい時は泣いて要求することが続いていた場合は好ましい行動の学習が必要です。

この状況で好ましい行動は「買って」を言う事ですが、発語が苦手な子どもが多いため「指さし」で要求することを好ましい行動とします

泣いたときはお菓子は買わず指さし行動の時にお菓子を買ってあげるように目標行動があった時に強化することを分化強化と言います。

消去バースト中に強化することも分化強化に当てはまるため注意が必要です。

プロンプト

子どもに新しい学習の時は始めから一人で完璧に行うことは難しいです。

その場合は子どもに声掛けする等の手立てを示すと思います。この手立てのことをプロンプトと言います。

例えばスプーンで食べ物を口に運ぶということを学習したい場合は子どもの手にスプーンを手渡すことや手添えでスプーンを一緒に取るかと思います。この手渡しや手添えがプロンプトに該当します。

プロンプトは身体プロンプト部分的身体プロンプトモデルプロンプト動作プロンプト音声プロンプト視覚プロンプトがあります。プロンプトの最終目標はヒント無しで一人で出来ることです(自発行動

プロンプトありきの学習は子どもの自発性が失われるため、少しずつプロンプトを減らす必要があります(フェイディング)。

例えば、スプーンを口元に運ぶ場面で止まった際は「食べるよ」等声掛けすることが多々あると思いますが、この声掛けもプロンプトになります

「声を掛ければ出来る」と保育園や学校の先生や支援者から情報提供されることがありますが、これは音声プロンプトになるため自発的行動ではありません。自発的行動へ移行するためには次のプロンプトへ移行することやフェイディングの必要があります。

課題分析

「スプーンを使って食べ物を口の中に入れる」と言う目標があった場合は、細分化した行動に分けて学習を進めます。

細分化すると以下のようになります。※子どもに合わせて課題分析を行ってください。

  1. スプーンを持つ
  2. 食べ物を掬う
  3. 口元に運ぶ
  4. 口の中に食べ物を入れる

これを一つずつプロンプトを交えながら進めていきます。
このステップを進める際は1から順に行うのか4から順に行っていくかの2通りあります。

始めから順に進めることを順向連鎖、一番最後から進めることを逆行連鎖と言います。
ステップ1から自発的に行動してもらうか、ステップ4から自発的に行動してもらうかの違いです。

強化スケジュール

強化子を渡すタイミングをどうするかが強化スケジュールです。

定比率スケジュール(FR)
変比率スケジュール(VR)

定比率スケジュール(FR)

常に決まった回数の行動が見られたら強化子を与える
例えば音声模倣を5回出来たら楽器を鳴らしてもらう。次も5回出来たら…。
5回行動が見られた時のスケジュールであるためFR10という表現をします。

変比率スケジュール(VR)

数回行動が見られたら強化子を与える。
例えば音声模倣を5回出来たら楽器を鳴らしてもらう。次は音声模倣を7回出来たら強化子を与えるように毎回決まった回数ではありません。
この場合は平均を算出します。5回+7回÷2=6 そのためVR6という表現になります。

まとめ

今回は泣くという行動を例にしてお話しをしていきましたが、身の回りには行動が満ち溢れています。

なぜ私たちは働いているのか?それはお給料が欲しいから。

その給料を元に生活をしていくから。など働くという行動に対しても色々と考えることが出来ます。

ここでのABAの話は部分的なもので、本来は学問的にもっと深いものとなっています。

興味がある方はABAの書籍を直接手にとってみてはいかがでしょうか。

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